株式会社とホールディングス

2000年代頃から急速に増えたホールディングス

一部上場企業の中には、ホールディングスと付いている会社が多くあります。
これは株式会社の形態の一種で日本語では持株会社とも呼ばれるものです。
2000年代頃から急速に増えたこのホールディングスは株式会社における問題を解決するために大企業を中心に導入されています。

そもそも株式会社は会社が株式を発行して、投資家から資金を調達しその代金によって事業活動を行うものです。
このため会社そのものは株主が保有しており会社は資金を元に事業活動を行い、利益が上がれば配当金や株主優待などを使って株主に還元します。

また株式には会社そのものの価値が付随しており企業が成長するほどその価値が高まっていきますが、廃業などの理由により会社を精算した場合に資産と負債を相殺し余ったお金は株主に分配されるなど株式会社の所有権は株主に存在しているものです。

もちろん事業が上手く行かなくて経営が悪化すると株式の価値は低下し倒産などで会社を精算すれば株式の価値はなくなりますが、株主に対してすべての責任が及ぶわけではなく倒産によって精算しても負債が残った場合でも株主に責任は及ばない特徴があります。

株式上場するメリット

事業をはじめたばかりの株式会社の場合には創業者や経営に携わる従業員などがその株主となりますが、事業が順調に推移すれば、より多くの資金を集めることや社会的な信用を得るために証券取引所に上場するという手段をとる会社も多いです。

株式上場するメリットは多くの投資家から資金を集められることのほか、株式が市場で取引されるため株価が決定するため会社の価値そのものを高めることができます。

また株式を上場するさいにはもともと株式を持っていた株主が市場で売却することができ大きな利益を得ることも可能です。
ただ上場するためには厳しい基準を満たしていることが重要で上場まで最低3年程度は準備期間が必要で相応に費用が掛かります。

このような厳しい基準を満たしているからこそ市場で安心して取引でき、またそれが企業の信用につながるものです。

経営の自由度が縛られる

株式会社にして上場することは企業にとってメリットが多いものですが、デメリットも存在します。
デメリットとしては経営の自由度が縛られることです。

株式会社になると重要な案件に関しては株主総会で株主の多数決によって決定します。

提案そのものは企業が行いますが、このさいに経営に関する重要案件が否決されると経営の見直しをする必要になりますし、また株主としては企業価値を高めることが株価の上昇につながるため、長期的な発展よりも直近の業績を重視する傾向にあるため、将来に向けての投資がしにくくなりますし、事業が行き詰まると経営陣に経営責任が発生するものです。

特に物言う株主に株式の多くを握られると経営に口出しされ自由な経営ができなくなります。

買収リスク

そして、上場している株式会社にとってもっとも大きな問題が買収リスクです。
上場企業の株は市場で流通しているので資金に物を言わせて買い集めれば簡単に会社が買収されてしまいます。

もちろん、簡単に買収されないように防ぐために一定数の株式は自社で持ったり友好的な関連会社、取引をしている銀行などに持ってもらうといったことが行われますが、しかし、それでも流通している株式の多数を買い占められるなどすれば経営そのものを大きく圧迫してきますし、さらに問題となるのが子会社となっている場合です。

2000年代の日本株式取引で問題となったのが、この子会社の方が企業価値が高い場合で、親会社を買収することで子会社の株式や資産を売却して利益を得ようというもので、このような行為を防ぐために本業のある会社が親会社となるのではなくすべてのグループ会社をすべて子会社化するのがホールディングスになります。

子会社の上場を廃止して他社に買収されることを防ぐ

ホールディングスは持ち株会社と呼ばれるように子会社を管理するための会社で、そこが各企業の大株主となるものです。
上場するのはホールディングスのみで子会社の上場を廃止して他社に買収されることを防ぐことができます。

グループ全体の企業価値はホールディングスに集約されるため子会社の価値が親会社を上回るといったことを防ぐことが可能です。
また株主が集約されるので子会社となる企業の経営の意思決定が迅速に行えますし、大株主であるため買収や合併などが行いやすく人事面でも柔軟に行うことができます。

特に買収や合併は行いやすくなり、不採算部門の切り離しや異業種への進出のさいに他社を買収する手続きも簡略化することができますし、それにグループ全体として利益を追求することができるのも大きなメリットです。

もちろんこの方法にもデメリットもあり、子会社の経営権や人事権が親会社が集約され子会社間の連携が取りづらくなったり、子会社そのものの経営の自由度を削ぐ場合もあります。

またグループ全体の評価になるため子会社の赤字が増えるとその影響を受けやすくなりますし不祥事のさいにグループ全体に影響が出る可能性があるものです。
それに働く側としても交渉先が子会社なのか親会社であるのかわかりにくくなり社員のモチベーションにも影響が出るリスクがあります。

© All Right Reserved